社会人になるまでははっきりいいますと、興信所というのは憧れの職業であったと言ってもいいでしょう。中学生位から推理小説にハマってしまった私は小説の中で大活躍する興信所という職業の人はまさしく憧れでした。日本の推理小説での興信所と言えば明智小五郎であり、金田一耕助でありました。フィクションと言われればそれまでですが、そのような職業があるのだろうとなんとなく理解していたのです。難しい殺人事件を警察官を出しぬいてさっそうと解決する興信所は格好いいものでしたし、ちょっと年齢が上になってからハマったアメリカの作家の書くハードボイルド小説の大抵はニヒルな魅力が満載でした。また、鮮やかなセリフを当たり前に吐くことがまた格好良さに拍車をかけるのです。どこまで行っても私にとっては興信所は格好いいものだったのです。

 

実際に日本の興信所と呼ばれる人がそのような存在でないことがわかってきた時にそんなものかと思いました。日本での興信所というのは身元調査や浮気調査ばかりしている存在であるようです。それを無視するように推理小説では私立興信所は活躍しますが、実際にはそのような人は日本には存在しません。警察のように捜査権がないのですから当然といえば当然ですが、日本では法律が変わらないかぎりは小説のような興信所は出てこないのでしょう。実際の興信所は憧れではなくなってしまったことは少し残念ですが、小説の中でも今でもたくさんの格好の良い興信所がいるのでそれで我慢しましょうか。